最近、ある建設会社の社長と、人材採用について話す機会がありました。
その会社では工事の依頼自体は入ってきているものの、現場を任せられる人が足りず、新たな受注や事業拡大が難しくなっているそうです。
そこで経験のある施工管理者を採用したいと考えているものの、実際に採用しようとすると月収50万円以上の条件が必要になる。さらに、良い条件で採用できたとしても、その人が本当に会社へ定着してくれるかは分かりません。
これは今、多くの建設会社が抱えている問題ではないでしょうか。
経験者を採用したくても、市場にほとんどいない
別の機会に人材会社の方と話したところ、経験者の施工管理者を採用する難しさについて、興味深い話を聞きました。
現場をある程度任せられる人材を採用しようとすると、どうしても10年以上の経験を持つ人を探すことになります。
しかし、それほどの経験がある人は、現在の会社からも重要な人材として扱われています。また、若い頃から仕事を教えてもらい、現場監督として育ててもらった会社との人間関係もあります。
そのため、給料などの条件を少し上げただけでは、なかなか転職してくれません。
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、2025年度の建築施工管理技術者の有効求人倍率は8.62倍、土木施工管理技術者は15.74倍となっています。経験者の採用競争が厳しいことは、現場の感覚だけでなく、求人データからも確認できます。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「建築施工管理技術者」
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト「土木施工管理技術者」
人材会社からも、「経験者を探し続けるより、未経験者や若手を採用し、自社で教育していく方が現実的です」という話がありました。
この意見自体は、とても合理的です。
ただし、建設会社の社長からすると、ここで新たな問題が発生します。
自社で育てた方がよいことは分かった。では、誰が、いつ、どのように教えるのか。
ここに、建設会社と人材会社の間にある大きな空白があります。
教育が必要だと分かっていても、教育を担う人がいない
建設会社の社長は、経験者を採用したいと考えています。
一方、人材会社は、経験者の採用は難しいため、自社で教育した方がよいと考えています。
しかし、人材会社の主な仕事は人材の紹介です。入社後の施工管理教育や現場OJTまで、継続的に担当するわけではありません。
そして建設会社の中では、仕事を教えられるベテランほど、複数の現場や重要な判断を抱えています。若手を育てる必要性は理解していても、毎日の業務に追われ、教育に使える時間がありません。
つまり、問題の本質は「経験者を採用するか、未経験者を採用するか」ではありません。
自社教育が必要だと全員が分かっているのに、教育を担える人がどこにもいない。
これが、建設会社が本当に直面している問題ではないかと考えています。
定着の問題も、自社教育とつながっている
建設会社の社長は、「高い費用をかけて採用しても、すぐに辞めてしまうかもしれない」と心配しています。
一方で人材会社は、「長年勤めている経験者は、育ててくれた会社との関係があるため、条件だけでは転職しにくい」と話しています。
この2つは、同じ現象を別の側面から見たものです。
外部から経験者を採用する場合、条件面が入社理由になりやすいため、さらに良い条件を提示する会社が現れれば転職する可能性があります。
一方、自社で仕事を教え、成長を支援し、本人が活躍できる環境をつくれば、会社との関係性や仕事への納得感を育てられます。
もちろん、教育すれば必ず定着するわけではありません。給与、休日、労働時間、上司との関係、評価制度なども影響します。
それでも、若手が成長を実感できる環境をつくることは、定着可能性を高める重要な要素になります。
社長が必要としているのは「人」ではなく「現場を回す機能」
もう一つ考える必要があるのは、本当に10年以上の経験者でなければ、現場監督の仕事はできないのかという点です。
現場監督の仕事には、さまざまな業務があります。
- 発注者や元請との折衝
- 施工方法や納まりの判断
- 職人、協力業者との工程調整
- 施工図や工程表の確認
- 施工計画書や安全書類の作成
- 工事写真や検査記録の整理
- 追加変更工事の記録
- 日報、議事録、各種報告書の作成
施工方法の判断や発注者との折衝には、一定の経験が必要です。
しかし、写真整理、記録、書類作成、確認事項の整理などは、最初から10年の経験が必要な仕事ではありません。
現場監督の仕事を一つの大きな塊として考えるから、「10年以上の経験者を採用しなければならない」という結論になります。
業務を難易度ごとに分解し、未経験者や若手でも担当できる仕事を明確にすれば、採用対象を広げられます。
そして若手が定型業務を担当できるようになれば、ベテランは施工判断や発注者対応など、本来経験者が担うべき仕事に集中できます。
目指すべきなのは、若手を短期間でベテランにすることではありません。
若手がベテランの仕事の一部を担い、今いる監督が担当できる範囲を広げること。
これなら、現実的に取り組めます。
経験者採用だけに頼らない会社をつくる
月収50万円の経験者を採用した場合、給与だけで年間600万円です。
さらに、賞与、法定福利費、採用費などが加わります。それだけの費用をかけても、採用できるとは限らず、長く定着する保証もありません。
一方、未経験者や若手を採用し、外部の教育支援を活用する方法は、短期的には経験者採用と同程度の費用がかかる可能性があります。
それでも大きく違うのは、教育の仕組み、帳票、評価基準、育成ノウハウが会社に残ることです。
一人を育てて終わりではなく、翌年以降に採用する人材にも同じ仕組みを使えます。経験者一人に依存する会社から、未経験者や若手を継続的に育てられる会社へ変わることができます。
短期の負担軽減と、中長期の育成を同時に進める
ただし、建設会社が今困っているのに、「半年後や1年後に若手が育ちます」と提案するだけでは不十分です。
教育の成果が出るまで、今いるベテランの負担は減らないからです。
そのため、若手教育と同時に、次のような現場管理業務の整理・標準化を進める必要があります。
- 現場監督業務の分解
- 着工前確認事項の整理
- 帳票やチェックリストの標準化
- 写真、記録、書類管理の効率化
- 若手に任せる業務範囲の設定
- ベテランが確認すべき重要事項の明確化
- 30日、90日、180日ごとの成長評価
- AIやデジタルツールを使った記録・確認支援
短期的には、ベテランが抱えている仕事を整理して負担を軽くする。
中長期的には、若手が担当できる仕事を増やしていく。
この2つを同時に進めることで、初めて「人が足りない」という問題を根本から改善できます。
WEBの現場監督が目指していること
WEBの現場監督では、単に現場の相談に乗るだけではなく、建設会社が自社で施工管理人材を育てられる仕組みづくりを支援しています。
鹿島建設で16年間、建築施工管理に携わった経験をもとに、現場業務の分解、管理方法の標準化、若手教育、現場OJT、定期的なダブルチェックまで一緒に進めます。
経験者の採用を否定するわけではありません。重要なポジションでは、経験者の力が必要です。
しかし、すべての業務を経験者採用だけで解決しようとすると、人材が見つからない限り、会社の成長も止まってしまいます。
これから必要なのは、経験者を探し続けることと並行して、未経験者や若手を採用し、現場監督として育てられる会社へ変わることです。
現場監督の教育について、一度整理してみませんか
「工事は取れているのに、任せられる人がいない」
「若手を採用しても、教えられる人がいない」
「ベテランが忙しく、教育まで手が回らない」
「現場監督の仕事が属人化している」
現在の状況を確認し、どこから教育と業務整理を始めるべきか一緒に考えます。
御社の教育に課題を感じているなら、一度ご相談ください。