建設会社の経営者や現場責任者と話していると、かなり高い頻度で出てくるのが「施工管理者を採用したいけれど、なかなか採れない」という悩みです。
もちろん、給与・休日・福利厚生・求人票の見せ方を改善することは重要です。ただ、それだけで解決するほど単純な問題ではありません。
施工管理の世界では、資格を持ち、現場経験があり、工程・品質・安全・原価・協力会社との調整まで任せられる人材になるまでに長い時間がかかります。私自身の現場経験から見ても、ある程度一人で現場を任せられる状態になるまで「10年程度」を一つの目安として考えることがあります。もちろん工事規模や会社、本人の経験によって差はありますが、短期間で完成する職種ではないことは間違いありません。
施工管理者は、そもそも採用市場に少ない
厚生労働省が公表した「建設雇用改善計画(第十一次)」では、2024年度の建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.58倍とされています。全産業の1.25倍と比べても、建設技術者の採用市場が極めて厳しいことが分かります。
また、国土交通省・厚生労働省の資料では、建設業の技能者のうち60歳以上が約4分の1を占める一方、29歳以下は約12%とされています。若手の確保と育成は、一社だけの問題ではなく、業界全体の課題になっています。
つまり、「求人を出したのに応募が来ない」というより、そもそも複数の会社が限られた経験者を取り合っている状態です。
経験豊富な施工管理者ほど、条件だけでは動きにくい
さらに難しいのは、会社が本当に欲しい「現場をある程度任せられる経験者」ほど、現在の会社でも重要な役割を持っていることです。
長く勤めている施工管理者であれば、社内での立場だけでなく、協力会社、職人、設計者、発注者との人間関係も築かれています。担当現場や今後の予定も抱えているため、多少給与条件が上がっただけで簡単に転職するとは限りません。
採用条件を上げ続ければ、一時的に採れる可能性は高まります。しかし、それは他社との条件競争にもなります。さらに、採用した一人に現場管理のノウハウが集中すると、今度はその人が辞めた時に会社の現場力まで失うという問題が起こります。
「できる人を採る」だけでは、属人化は解決しない
中小建設会社でよく起きるのが、ベテラン監督ごとに仕事の進め方が違う状態です。
- 着工前に何を確認するか
- どの段階で施工図を作るか
- 設計者へ何を確認するか
- 発注前にどこまで納まりを詰めるか
- 追加変更工事をどう記録するか
- 若手に何を、どの順番で教えるか
こうした内容が「ベテランの頭の中」にしかない会社では、新しい人を採用しても、その人自身の経験に頼ることになります。
逆に言えば、採用難への対策は、人事や求人担当だけで考えるべき問題ではありません。現場管理そのものを、若手が学びやすい形に変える必要があります。
採用難の時代に必要なのは「人を育てられる会社」
これからの建設会社に必要なのは、「経験者が何人いるか」だけではなく、「未経験者や若手を、どこまで育てられるか」という力だと思います。
そのためには、現場管理を標準化し、経験者の判断基準を会社の仕組みに落としていくことが重要です。
1.着工前の確認項目を標準化する
契約範囲、設計図書、施工図、発注、工程、仮設、搬入、近隣対応など、着工前に確認する内容をチェックリスト化します。若手が「何を確認すればいいのか分からない」状態を減らします。
2.施工図と設計確認を、現場任せにしない
「職人から聞かれてから設計に確認する」のではなく、工事前に必要な施工図や納まり検討を洗い出す仕組みを作ります。設計確認や施主の物決めも前倒ししやすくなります。
3.追加変更を記録する
口頭指示や現場判断だけで工事を進めると、追加請求漏れや認識違いにつながります。変更内容、指示者、金額、承認状況を記録することで、若手でも追いかけやすくなります。
4.OJTを「見て覚える」から「確認して教える」に変える
ベテランが全部やってしまうのではなく、若手に一度考えさせ、工程表・施工図・発注内容・現場確認結果をレビューする形に変えます。これにより、経験を再現可能な教育へ変えていくことができます。
採用と育成は、どちらか一方ではない
ここまで読むと「採用を諦めるべき」という話に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。経験者採用は引き続き必要です。
ただし、採用だけで会社の施工管理体制を維持しようとすると、採用できなかった時にすべてが止まります。
「採る」と「育てる」を両方やる。そして、ベテランの経験を会社の仕組みとして残す。この3つを同時に進めることが、採用難の時代には重要だと考えています。
まとめ
施工管理者の採用難は、求人条件だけの問題ではありません。
経験豊富な施工管理者はそもそも市場に少なく、現場を任せられるレベルまで育つには時間がかかります。だからこそ、これからは「優秀な経験者を探し続ける会社」だけでなく、「若手が育つ仕組みを持つ会社」になることが必要です。
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