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建設コスト上昇時代に利益を守る|2026年の価格転嫁とスライド条項

見積・原価・追加変更 公開日:2026.09.05
建設コスト上昇時代に利益を守る|2026年の価格転嫁とスライド条項

建設会社の利益を圧迫しているのは、単なる「一時的な値上がり」ではありません。資材価格の高止まり、労務費の継続的な上昇、物流制約、人手不足が重なり、建設コストの前提そのものが変わっています。

この状況で「以前と同じ単価」「工事が終わってから追加相談」という進め方を続けると、売上は増えても粗利が残りません。必要なのは、値上がりを我慢することではなく、受注前・契約時・施工中の3段階で価格転嫁を仕組みにすることです。

建設コストの上昇は、一時的な異常ではない

国土交通省が公表した令和8年3月適用の公共工事設計労務単価は、全国全職種の加重平均で1日25,834円。前年度比4.5%増で、14年連続の上昇となりました。

さらに重要なのは、この25,834円が事業主の負担する法定福利費、安全管理費、労務管理費などをすべて含む金額ではないことです。国土交通省の資料では、労務単価が25,834円の場合、事業主が労働者1人を雇用するために必要な経費は38,234円、つまり労務単価の約148%になると示されています。

「職人へ支払う日当」だけを労務原価として見積もれば、法定福利費や現場管理に必要な費用が見積りの外へ漏れます。この漏れを一般管理費や現場経費で曖昧に吸収し続けると、受注するほど資金繰りが苦しくなる構造が生まれます。

価格転嫁できない会社ほど、売上と利益が乖離する

帝国データバンクによると、2025年の建設業倒産は前年比6.9%増の2,021件。4年連続で増加し、過去10年で最多となりました。背景には、人件費・建材価格の上昇や工期延長などのコスト増を請負価格へ十分に転嫁できていない状況があります。

ここで見るべきなのは、受注量の多さより「どの案件を、どの条件で受注したか」です。施工能力が限られる中、粗利の薄い案件を積み上げると、忙しさだけが増え、利益とキャッシュが残らなくなります。

価格転嫁力とは、単に強く値上げを要求する力ではありません。材料費・労務費・必要経費を分け、変動の事実を記録し、契約根拠に沿って相手と協議できる力です。

改正建設業法で「安く受ける」こと自体がリスクになる

2025年12月12日に全面施行された改正建設業法では、適正な労務費の確保、資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止、価格転嫁の円滑化が重視されています。

労務費の基準に照らして著しく低い見積りを発注者が依頼した場合は勧告・公表の対象となり、受注者側が著しく低い見積りを提出した場合も指導・監督の対象となり得ます。また、原価割れ契約や著しく短い工期の禁止も、発注者・受注者の双方に関係します。

従来のように「まず安く受けて、後で何とかする」という進め方は、利益面だけでなく法令・信用面でも危険です。見積りの根拠を明確にし、適正な労務費と必要経費を提示できる体制が必要です。

利益を守る3つの実務

1.見積りを「材工分離」にする

材料費と労務費を一式でまとめず、少なくとも次の項目へ分けます。

  • 材料費
  • 労務費
  • 法定福利費
  • 安全管理費・労務管理費
  • 運搬費
  • 現場経費
  • 一般管理費

材工分離の目的は、見積書を細かく見せることではありません。どのコストが、いつ、どれだけ上がったのかを説明できる状態をつくることです。

2.契約書に価格改定の条件を入れる

民間工事では、契約書や注文請書に価格変動時の変更方法が書かれていなければ、後から増額を求めることが難しくなります。工期が長い案件、鉄骨・生コン・燃料など変動の大きい資材を使う案件では、価格改定条項(インフレ条項・スライド条項)をあらかじめ入れておく必要があります。

条項では、少なくとも以下を明確にします。

  • 対象となる資材・労務費
  • 変動を判定する基準日
  • 使用する公的指数や見積資料
  • 変動率または金額の基準
  • 協議を申し出る期限
  • 変更金額の計算方法

契約条項は「必ず全額補填される制度」ではなく、発注者と受注者が公平に協議するためのルールです。自社負担となる範囲を理解せず、全額請求を前提に資金計画を立てるのは危険です。

3.数量・価格・時期を施工中に記録する

価格転嫁の協議では、「高くなりました」だけでは根拠になりません。必要なのは次の3点です。

  • 数量根拠:出来高報告、数量表、発注数量
  • 価格根拠:当初見積り、変更見積り、購入伝票、公的指数
  • 期間根拠:契約日、見積有効期限、発注日、納入日

この記録を工事終盤に集めようとしても、資料の欠落や記憶違いが起きます。週次または月次で原価差異を確認し、一定の変動を超えた時点で早期に協議を申し出る運用が必要です。

実務で使える価格転嫁の進め方

  1. 受注前に、変動しやすい資材と労務費を洗い出す
  2. 見積りを材工分離し、有効期限を記載する
  3. 契約書・注文請書に価格改定条項を入れる
  4. 着工後は、実勢単価と当初単価の差を月次で確認する
  5. 数量・価格・期間の3点セットを保存する
  6. 残工期がある段階で、発注者へ書面で協議を申し出る
  7. 変更合意を注文書・変更契約書へ反映する

この流れを営業、積算、工事、経理で共有することが重要です。現場監督個人の交渉力に任せると、案件ごとに対応がばらつき、協議のタイミングも遅れます。

まとめ|値上がり対応を「会社の標準」に変える

2026年の建設経営では、安く仕入れる努力だけでは利益を守れません。資材・労務コストの上昇を前提に、適正価格で受注し、変動が起きたら根拠をもって協議できる会社へ変わる必要があります。

そのための要点は、受注前の原価分離、契約時の価格改定条項、施工中の証拠管理の3つです。価格転嫁を現場任せにせず、見積り・契約・原価管理をつなぐ会社の標準業務として整備しましょう。

参考資料

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