現場ごとに、工程の作り方も、職人さんへの指示も、設計変更の残し方も違う。
問題が起きたときは、担当者の経験と頑張りで何とかしている。
小さな建設会社では、こうした管理になりやすいものです。
決して、現場の担当者が怠けているからではありません。限られた人数で複数の仕事を進める中で、一人ひとりが自分なりのやり方を作ってきた結果です。
ただし、着工前の現場確認をしないまま工事を始めたり、変更指示を口頭だけで済ませたりすると、手戻り、工程遅延、追加工事の請求漏れにつながります。
鹿島建設で16年間施工管理に携わった経験から見ると、事前確認をせずに現場へ入ることは、コースを下見せず、いきなりレースを走るようなものです。
この記事では、すべての現場を同じ方法に縛るのではなく、会社として最低限そろえるべき管理を、着工前・施工中・竣工時の3段階に分けて解説します。
現場管理が属人化する3つの理由
1.経験者が自分のやり方で現場を納めてきた
経験のある担当者は、現場に合わせて判断し、必要な相手へ直接連絡しながら工事を進めます。
それ自体は強みです。
一方で、判断の過程や確認項目が本人の頭の中だけにあると、ほかの社員は同じように動けません。
その人が不在になると情報が止まり、若手は何を確認すべきか分からなくなります。
2.忙しく、事前確認や記録を後回しにしている
「規模が小さいから、毎回現地を確認する時間がない」「書類を増やす余裕がない」という気持ちはよく分かります。
しかし、事前確認を省いた結果、着工後に設計をやり直したり、口頭指示の記録がなく追加工事を請求できなかったりすれば、後からより大きな時間と費用がかかります。
標準化の目的は、書類を増やすことではありません。
後から発生する手戻りを減らすことです。
3.会社として共通の管理手順が決まっていない
工程表、作業指示、担当分け、設計変更、着工前確認などが、担当者ごとの判断に任されている会社があります。
この状態では、問題が起きても「今回は担当者が気をつける」で終わり、次の現場へ教訓が残りません。
過去の失敗や工夫を、会社の共通ルールとして残すことが必要です。
実際に起きた3つの問題
以下は、支援先で確認した内容を、会社名や案件が分からない形に整えた事例です。
着工前確認がなく、設計のやり直しと工程遅延が発生した
既存建物の改修工事で、天井内の設備や配管の接続状況を事前に確認しないまま計画が進んでいました。
工事が始まり、既存天井を解体して初めて内部の状況が分かり、当初の設計では施工できないことが判明しました。
そのため、設計の見直しが必要になり、工程も遅れました。
図面を確認することは大切ですが、改修工事では図面と現場が一致しているとは限りません。
着工前に現場で確認する項目を決めておく必要があります。
変更指示を口頭で行い、追加工事として請求できなかった
現場で設計変更やトラブルが起きた際、職人さんへの指示をすべて口頭で行っていました。
工事完了時には、誰が、いつ、なぜ変更を指示したのか、その工事が元の契約範囲なのか、追加工事なのかを追えなくなっていました。
その結果、実際には追加で行った工事を請求できませんでした。
口頭で指示を出す場面があること自体は問題ではありません。
問題は、その後に記録が残らないことです。
変更が発生した場合は、事実、指示内容、費用、工程への影響を記録し、関係者で確認する必要があります。
一人の担当者が情報を握り、社内で指示が重複した
現場の情報が担当者一人に集まり、社内へ共有されていない事例もありました。
ほかの社員が状況を知らないため、同じ内容を別々に指示したり、古い情報で手配したりすることが起きました。
担当者本人も、すべての問い合わせを受けるため、現場から離れにくくなります。
情報共有は、報告のためだけに行うものではありません。
会社として判断できる状態をつくり、担当者一人の負担を減らすために必要です。
標準化は、すべての現場を同じにすることではない
建物の用途、規模、工種、発注者、周辺環境は現場ごとに違います。
そのため、細かな作業方法まで一律に決めると、現場に合わず使われなくなります。
そろえるべきなのは、書式の見た目よりも、重要な確認を行う時期と、記録を残す方法です。
例えば、次のような共通ルールです。
- 着工前に、誰が現場を確認するか
- 施工前に、図面と現場の違いをどこへ記録するか
- 変更が起きたとき、誰が承認し、費用と工程への影響をどう残すか
- 職人さんへの重要な指示を、どの方法で記録するか
- 竣工時に、追加工事と未処理事項を誰が確認するか
最低限の通過点を会社でそろえ、現場ごとの違いはその上に追加します。
最初に標準化する3つの段階
1.着工前:現場を確認し、工事の前提をそろえる
着工前は、工事を始めてから変えにくい条件を確認する段階です。
最低限、次の内容を確認します。
- 契約範囲と見積条件
- 設計図書の不明点や図面間の不整合
- 既存建物、設備、配管、搬入経路などの現地条件
- 施主、設計者、協力業者への確認事項
- 工程上の重要な節目
- 社内と協力業者の担当分け
- 着工までに決めることと、その期限
確認結果は、打ち合わせ記録、写真、チェックリストなど、後から見返せる形で残します。
すべてを詳細な報告書にする必要はありません。
重要なのは、未確認事項を曖昧なまま着工日に持ち込まないことです。
2.施工中:工程、指示、変更を記録する
施工中は、情報が最も増え、変更も起きやすい段階です。
ここでは、次の3点を共通化します。
- 週間と翌日の工程確認
- 重要な作業指示の記録
- 設計変更・追加工事の管理
変更管理では、変更内容だけでなく、次の項目を一つの記録にまとめます。
- 発生日
- 変更前と変更後の内容
- 変更理由
- 指示者と確認者
- 関連する図面や写真
- 金額への影響
- 工程への影響
- 発注者への提出・承認状況
口頭で急いで指示する場面はあります。
その場合でも、当日中に短い記録を残し、関係者へ共有する運用を決めます。
3.竣工時:追加、未処理事項、次の現場へ残す情報を確認する
竣工時は、完成検査だけでなく、工事中に生じた変更や追加を清算する段階です。
- 未完了事項と是正状況
- 追加・変更工事の一覧と承認状況
- 竣工図、施工写真、取扱説明書などの引渡し資料
- 協力業者への未処理事項
- 見積と実績の差
- 次の現場で繰り返さないための振り返り
ここで得た教訓を、着工前チェックリストや変更管理表へ反映します。
標準化は、一度ルールを作って終わりではありません。
現場を経験するたびに、会社のやり方を少しずつ更新する活動です。
ベテラン社員の反発を減らす進め方
標準化を「今までのやり方が間違っていたから変える」と伝えると、反発が起きやすくなります。
ベテラン社員は、長年の経験で現場を納めてきました。
その知恵を否定するのではなく、若手やほかの社員も使える形に残すことが標準化の目的です。
まずは、ベテランが普段どこを見て、何を危険だと判断しているのかを聞きます。
若手から意見が出た場合も、「それは前に検討した」とすぐに終わらせず、何に困っているのかを確認します。
一方で、若手も、分からないことをすべて上司へ渡すのではなく、自分で図面や過去資料を確認したうえで、分からない点を整理して相談する必要があります。
経営者、現場管理者、若手、必要に応じて外部の支援者が、「書類を増やすためではなく、手戻りと負担を減らすため」という共通の目的を持つことが重要です。
DXやITは、管理手順を決めた後に使う
チャット、クラウド、施工管理アプリを導入しても、何を、いつ、誰が記録するかが決まっていなければ、情報の置き場所が増えるだけです。
国土交通省の「i-Construction 2.0」でも、デジタル技術の導入だけでなく、仕事の進め方、組織、プロセス、企業文化や働き方を変える取り組みが示されています。
先に現場管理の流れを整理し、その後で、記録や共有を楽にする道具としてITを選ぶ。
この順序にすると、小さな会社でも使い続けやすくなります。
まとめ:小さな会社ほど、最低限の確認手順を共通にする
現場管理の標準化は、大手建設会社の複雑な書類をそのまま導入することではありません。
長年の失敗と改善から生まれた考え方を、自社の規模に合う形へ小さくして使うことです。
最初は、着工前・施工中・竣工時の3段階で、次の内容を決めます。
- 着工前に、現地条件と工事の前提を確認する
- 施工中に、工程、重要な指示、変更を記録する
- 竣工時に、追加工事、未処理事項、次に残す教訓を確認する
一枚のチェックリストや、一つの現場での試行からでも始められます。
現場の知恵を会社の知恵として残すことが、担当者の負担を減らし、若手へ仕事を引き継げる体制につながります。
まずはお気軽にご相談ください。
現場ごとに管理方法が違い、社長や一部の担当者しか状況を把握できない状態になっていませんか。
WEBの現場監督では、現場業務360°分析を通じて、着工前、施工中、竣工時の仕事の流れを確認し、最初にそろえる管理手順を整理します。
現在のやり方を否定せず、経験者の知恵を活かしながら、小さく始められる改善方法を一緒に考えます。
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